最近、これまでかなりのゲームで採用されてきた残機システムが見直されています。例えば、スーパーマリオオデッセイでは、ミスをすると残機の代わりにコインが減るようになり、とても話題になりました。
そんな中で、Splatoon2 Octoの”NAMACOポイントシステ厶”が代わりの仕組みとしてとても面白かったので、分析・紹介してみたいと思います。
NAMACOポイントとは
Splatoon2 Octoでは、ステージをクリアしたり、イクラを集めると、NAMACOポイントが貯まります。そして、ステージを遊んだりリトライするためにこのポイントを使います。必要なポイント数に満たないと、ステージが遊べずにゲームオーバーとなります。
ポイントシステムの良いところ
ポイントの減少による緊張感
残機システムの良いところは、プレイに緊張感を与えてくれるところです。この緊張感を与えるには、残機の価値を高めるなどしてポイントが無くならないように頑張りたい!とプレイヤーに思ってもらう必要があります。
そのためにOctoのNAMACOポイントがどう工夫しているかというと、1ミスで減る残機(ポイント)が1機ではないんです。1リトライで何百、何千とポイントが減るので、ポイントを手に入れても慎重に使わなければすぐに無くなってしまいます。結果としてポイントの価値が高まっているのです。ポイントの減少が大きいことで、見た目的にもハラハラ感が増しているのではないでしょうか。
加えて、Splatoon2 Octoは本編のヒーローモードと比べてかなり高難易度になっていて、ポイントがどんどん減っていきます。そのため、残機が増え過ぎて残機システムが無意味になってしまうようなことがありません。しかも、ステージが難しいため、ポイントがなくなったときにステージをイチからやり直さなければならないことがとても大きなリスクになります。結果としてポイントが良い緊張感を持たせてくれて、面白さを増幅してくれるのです。
ミスに対するイライラの減少
残機システムはプレイにドキドキをもたらしてくれますが、上手くプレイできなくて残機が減るのは、がっかり感やイライラといったストレスにもつながります。では、OctoのNAMACOポイント制は、この問題点をどのように解決しているのでしょうか。
実はOctoでは、ゲームオーバーになったときではなく、ステージを遊んだりリトライする時にポイントが引かれます。逆に言えば、ゲームオーバーになっても勝手にポイントは減らないんです。これがミソで、例えゲームオーバーになってしまって、ポイント残高がもう少しで足りなくなる状況になっても、もっと必要ポイントが少ないステージに挑戦することでNAMACOポイントがなくなることを避けるという選択肢が残されています。この選択の自由度によって、ストレスを緩和しているのではないかなと感じました。
また、Splatoon2 Octoは、ダメージを一定量受けたりするとミス→ミスが一定回数でライフが0になってコンティニュー画面に→コンティニューが続くとNAMACOポイントがなくなりゲームオーバー というように3段階のクッションがあります。このように段階を踏んでいることも、失敗のストレスを緩和することに役立っています。
適度な罪悪感
NAMACOポイントがなくなってしまうと、ヒメちゃんがお金を貸してくれます。このゲームを遊んでいけば必然的にプレイヤーはテンタクルズの2人に愛着がわいてきて、友達の大切なお金を借りる申し訳なさを感じるはずです。
この適度な罪悪感こそが、ゲームオーバーにならないようにしよう!というプレイヤーの意志を強めてくれて、プレイヤーにちょうどいい緊張感を与えてくれるのです。
さらに、テンタクルズがお金を貸してくれたとき、2人をよく知らないプレイヤーでも、”テンタクルズは困ったときに助けてくれる、いいやつだな”ときっと思うはずです。このゲームにとってそれはとても大切なことで、テンタクルズが好きになれば、このゲームの魅力は何倍にも増していきます。(遊べばきっと分かります!)
ステージを選択する駆け引き
Splatoon 2 Octoは、ステージによって必要なポイント数が違います。プレイヤーによって得意不得意は違いますから、200ポイントで遊べるステージで何十回もミスしたり、逆に必要なポイントが高く設定されているステージでもすんなりクリアできてしまうこともあるんですね。
また、必要ポイントが高いステージでは、一回ミスしただけでゲームオーバーになってしまうこともありますが、クリアできれば大量のポイントがゲットできます。
なので、今のポイント残高を考えながら、リスクとリターンを考えて一番良いステージを見極めるという戦略的な駆け引きが成立して、ステージを遊ぶ前からとても面白いです。
頑張って遊んだ人へのご褒美
Splatoon2 Octoでは、ステージに落ちているイクラを集めてもポイントに換算されます。なので、じっくりステージを遊んだら、その分ミスしたときの貯金ができて、ゲームオーバーのリスクが少なくなるのです。
また、イクラを集めるためには難しいアクションをしたり、敵を倒したり、リスクを取る必要があり、もしミスしてしまうとポイントを失う危険が高まります。その結果、ポイントという存在を通して、リスクとリターンの遊びが上手く成り立っているんです。
報酬の嬉しさ
ステージをクリアすると、報酬としてNAMACOポイントが沢山もらえます。
たったそれだけのことなのですが、私はポイント残高が毎回ギリギリの状態でクリアしていたので、ポイントを貰えることがとても有り難く感じて、クリアした時に嬉しい気持ちになれました。つまり、チャレンジをクリアしてお金が貰えたり、宝箱を発見して新しい武器を手に入れるのと同じように、NAMACOポイントが自分の頑張りを認めてくれたり、ステージクリアのモチベーションを高めてくれるご褒美として機能していたのです。
これは、NAMACOポイントが残機としての価値をきちんと維持できているからこそできたことだと感じました。
ポイントシステムの気になるところ
実はこのNAMACOポイント制にも気になるところがあって、それは一度クリアしたコースをもう一度遊ぶことでポイントを荒稼ぎできる というところです。
おそらく、ポイントが足りなくなってしまったプレイヤーへの救済措置、そして一つのステージを何度も遊んでほしいという意図でこのような仕様になっているのだと思いますし、この遊び方を全否定したいわけではありません。
しかし、同じステージをポイント稼ぎのために何度も遊ぶことは、時として作業的になり、せっかくの面白さが失われてしまうかもしれませんし、比較的簡単にポイントが手に入ってしまうため、ポイントがなくなってしまう緊張感を削いでしまうことにも繋がると思います。
個人的には、一度クリアしたステージでは、ポイントが手に入らないという仕組みにすれば良いのではないかと思いました。(ただし、3つあるブキのうちまだ自分が試していないブキでクリアしたらポイントが付くという条件付き。)
緊張と緩和
ゲームは、日常から少し離れて、楽しい時間を過ごせる場でもあります。実生活で常にストレスにさらされているのに、ゲームの中でもうまくいかなくて過度なストレスがたまれば、せっかくのゲームが面白くなくなってしまいます。
ですが、うまくクリアできるかハラハラするのはゲームの醍醐味で、一番面白い部分の一つでもあるのではないでしょうか。Splatoon2 OctoのNAMACOポイント制はこのバランスを上手く取れるように工夫されているので、難しくても楽しく、熱中して遊ぶことができました。
緊張が必ず不快なストレスになるとは限りません。適度に落ち着けたり、ストレスを上回るほど熱くなれる体験があって、緊張を上手く制御することができれば、他では味わえない楽しさをもたらしてくれます。これからの残規制やそれに代わるシステムでは、ストレスと快感という相反する思いを調整し、楽しさを増幅させてくれることが大切になる気がします。
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