Nintendo Laboの「つくる」から考える、誰でもミスなくクリアできるのに面白いゲームとは?

ゲーム

ビデオゲームの面白さの原動力の1つは、「失敗」にあります。

操作を間違えたり、ダメージを受けたり、制限時間を過ぎてしまったりすると「失敗」になるからこそ、手に汗握る緊張感や失敗しないように戦略を考える駆け引き、思わずツッコミたくなるような予想外の失敗をしてしまったときの可笑しさ、そしてトライ&エラーを通して上達を感じられる嬉しさが生まれます。そして、それが「面白い、楽しい」という感情に繋がっていきます。

でも、Nintendo Laboの「つくる」はむしろ、プレイヤーに失敗させてはいけない遊びです。コントローラーの「Toy-Con」が完成しないと次の「あそぶ」の段階に行けないですし、せっかく完成を楽しみに買ったのに上手く作れなかった…となれば、悲しい思い出になってしまいます。

そこで、Nintendo Laboの「つくる」は誰でも失敗することなくクリアできるのに、どうして面白いあそびになっているのかを考えていきます。レベルデザインなど、何かを考えるきっかけになれば幸いです。

元々「難しい」内容を、遊びやすく工夫する

誰でも失敗することなくクリアできる…ということは、クリアの嬉しさを減らしてしまう恐れがあります。なぜなら、クリアして嬉しい気持ちになる理由の1つとして、「頑張った」「凄いことをやり遂げた」というような「達成感」があるからです。

そのため、「これは誰でもクリアできる」とプレイヤーが感じてしまえば、せっかくクリアしても嬉しい気持ちが生まれないかもしれません。

では、Nintendo Laboの「つくる」では、どのようにして「達成感」が生み出されているのでしょうか?

こんな風に、Toy-Conの中身はとても複雑な構造です。これを1から、自分で組み立てていきます。

実は、Nintendo Laboの「つくる」は誰でも失敗せずにクリアできるとはいえ、作業自体はとても複雑なのです。

もしNintendo Laboに動く説明書や解説テキストなどのサポートがなかったとしたら、最後まで完成させることはとても難しいと思います。

私自身も、最初に段ボールのパーツと材料だけを見た時に、「難しそうだけれど、本当に自分がこれを完成させられるのだろうか?」と少し不安になりました。でも、難しくみえるからこそ、完成した時に「これは誰でも作り上げられるようなものではない」「凄いものを作り上げた」というような気分になり、達成感を感じることができます。

つまり、Nintendo Laboは、元々難しい内容を、レベルデザインやグラフィック、UI・UXの工夫によって遊びやすくすることで、「誰でもクリアできるけれど達成感がある」という相反する効果を実現しているのです。

個人的には、これはゼルダの伝説の謎解きに近いのかも?と思っています。

ダンジョンの謎解きは歯ごたえが欲しいですが、誰にも解けない謎だと先に進めないですし、謎の答えが全く分からないとムズムズした気持ちが楽しさに勝ってしまいます。
そこで、ゼルダの伝説の謎解きは、何のヒントも無いと解くのは難しいけれど、レベルデザイン(その前に経験したことの応用にする、怪しい箇所に注意を向けるカメラワークにするなど)やグラフィック(爆弾で壊れるところだけヒビが入っているなど)の工夫で解きやすくしています。ただ、元が難しいので、謎が解けたときに達成感があるし、まるで自分だけがその謎を解けたような錯覚に陥ることができるのです。

なので、難しいけれど出来るだけみんなに謎を解いてほしい…と考えて設計されている点は、Nintendo Laboの工作に似ているのではないでしょうか。

個人的には、「難しいものを遊びやすくする」だけではなくて、「遊びやすいものを難しくみせる(※ただし、遊びづらくするのは✕)」という方法もアリかも!と感じています。

例えば、スーパーマリオ オデッセイに登場する「ニュードンクシティ」は、気軽にビルのてっぺんに到達できるような遊びやすいステージになっています。でも、デザインが現実世界のリアルな都市なので、慣れているアクションでもマリオの身体能力の凄さを実感しやすいのです。そのため、普通に壁キックをしても「マリオが凄く難しいアクションをしている!」と感じられるし、ビルのてっぺんまで行けた時には、「凄いことをした」という達成感が得られます。

これも、「誰でもクリアできる(到達できる)けれど達成感がある」に近いことなのかも?と思いました。

他にも、スプラトゥーンのヒーローモードで上手く突破できると1号や2号が無線で褒めてくれるように、誉め言葉によって達成感を高める…といった方法も色々なゲームで使われている素敵な方法だと思います。

出来なかったことが出来るようになる楽しさ

「失敗」はゲームの面白さの原動力!…と最初に書きましたが、反対に「失敗することがない」からこそ、生まれる面白さもあります。

私は工作が凄く下手で、簡単な折り紙を折ることもできません。そのため、Nintendo Laboを遊ぶ前は工作に苦手意識を持っていました。
でも、Nintendo Laboでは動く説明書がとても分かりやすく、親切丁寧な説明は勿論のこと、難しい部分で説明を止めたり、画面上の3Dモデルを回転させたりして、自分のペースでToy-Con作りを進めることができます。また、段ボールに色がついているのでどれがどの部品なのかが分かりやすかったり、ハサミを使う必要が無く折り目にもガイドがあったりなど、失敗させないための細かい工夫が沢山あります。

たとえを使って分かりやすくイメージさせると同時に、Toy-Conに親しみや愛着をもってもらう。
難しい部分は説明をより丁寧にする。
失敗しやすいところは、作業した後に上手くできているかの再確認を促す。
定期的に休憩を促して、楽しい!という気持ちがしんどい…というネガティブな気持ちに変わらないようにする。

そのため、工作が下手な自分でもToy-Conを完成させることができて、本当に嬉しかったことを覚えています。

つまり、誰でも失敗することがない…というのは、「出来なかったことが出来るようになる楽しさ」を内包しているのです。

個人的は、これはファンタジー世界で魔法が使えたり、アクションゲームで身体能力の高いアクションができたりするのと同じような楽しさに近いのかも?と思っています。

現実世界で運動がからっきしダメでも、ゲームの中では始めからいきなりハイジャンプができたり、険しい崖を登ったり、自分には出来ないようなアクションができて、だからこそ気持ちよかったり、新鮮な体験が得られたりします。

私がNintendo Laboの「つくる」で感じた楽しさや嬉しさも、現実世界で出来なかったことがゲームを通せば出来るようになる…という点でこれと共通しているのだと感じました。

パズルのピースがはまっていく驚きと楽しさ

Toy-Conは、最初にパーツを見ただけでは、その完成形がイメージしづらいです。

でも、工作を進めるにつれて、だんだんとパーツの形が変わっていき、完成に近づいたころには、このパーツはここに使う部品だったのか! と答え合わせがなされたような驚きを感じられます。

個人的には、推理モノのADVゲームで、物語の点と点が繋がって犯人が分かったときの「そういうことだったのか!」という驚きの面白さに近いのかも?と感じました。

全体の流れに緩急をつける

失敗があるゲームなら、毎回のプレイに多様なドラマが生まれます。でも、誰でもクリアできるとなると、そうしたドラマや緊張感が生まれにくく、どうしても単調になりがちです。だからこそ、単調にならずに楽しめるように、緩急をつけることがとても大切になると思います。

例えば、全体の難易度に強弱をつけたり、ダンジョンなら途中途中で驚くような大仕掛けを用意したり、ADVゲームなら後半で意外な展開が待っていたり、新事実が次々判明することで物語のテンポ感を上げたりなど…

Nintendo Laboは、簡単な作業もあれば、複雑で難しい作業もあり、それをバランスよく組み入れています。

例えばロボットキットでは、メインボディ関連の難しくて大規模な作業が終わったら、次は段ボールをクルクルまくだけ…という簡単で気楽な作業に進むというように、全体の流れの中で上手く難易度の緩急があることで、最後まで飽きずに作業を進めることができるようになっています。

手触りの気持ちよさ

任天堂のゲームは手触りの気持ちよさをとても大切にしていると思っています。

例えば、ピョン!とジャンプして駆け回ったり、ズバッ!と剣を振りかぶったり、バシャッ!とインクを塗りまくったりすることには、「ただそれをしているだけで楽しい」という本質的な気持ちよさがあります。それに加えて、動きのアニメーションやジャンプの高さといった細かい調整に拘ることで、手触りの良さに磨きをかけています。

同じようにNintendo Laboの「つくる」も、ツメや部品をカチッ!と差し込んだり、キュッキュッ!と綺麗に折りたたんだりなどなど…工作の作業には本質的な気持ちよさがあります。

こうした手触りの気持ちよさを感じられる場面がニンテンドーラボの「つくる」には沢山用意されているので、他の要素を頼らなくても、ただ作っているその過程だけで楽しい!と感じられるようになっているのです。

終わりに

ここまで述べたように、Nintendo Laboの「つくる」には、ゲームが持つ多様な面白さのエッセンスが沢山詰まっています。だからこそ、誰でも失敗することなくクリアできるのに、きちんと面白いあそびになっているのだと考えます。

本当に楽しいゲームだったので、Nintendo Laboをぜひ遊んで体験してみていただけたら嬉しいです!

個人的には、第3弾の「ドライブキット」が「つくる」は勿論のこと、広い世界を車で自由に駆け回れる「あそぶ」の要素がとても面白いのでオススメです!そこから、「わかる」に興味を持ったら自分だけのオリジナル3Dゲーム作りが本当に楽しい「VRキット」、「つくる」に興味を持ったら工作のやりごたえがある「ロボットキット」を試してみるのも良いかも!

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