2015年の組織再編以降の任天堂の開発体制について、分かる範囲で考えてみる

ゲーム

この記事には、公式に公開されている情報だけではなく、筆者の推測や憶測に基づく内容も含まれています。予めご了承ください。

任天堂の組織体制は、2015年以降大きく変化しています。

例えば、2015年9月14日には、これまでマリオ・ゼルダ・どうぶつの森などを作ってきた情報開発本部と、脳トレ・トモコレなどを開発した企画開発本部が統合され、新たに企画制作本部が誕生しました。

しかし、2015年の任天堂の開発組織の変化について纏められている資料が意外と見つからず、よく分からないことが多いと感じます。

そのため、この記事では2015年以降の任天堂の開発組織体制の変化について、備忘録として分かる範囲で考えていきます。

はじめに(前提)

まず、この記事では、リーク情報や匿名でのチャットといった出典が不明確な情報源ではなく、できる限り公式に近い情報であるインタビュー記事などから、分かる範囲で考えていきます。

そのため、全ての部署を網羅できているわけではなく、不明な部分については抜かして記載している箇所があることをご了承いただければと思います。

また、今回はゲームの開発に関わる組織について調べることを目的に記事を作ったため、ゲーム開発に直接関わっていない部署(知的財産部、経理部など)については詳しく言及していません。予めご了承ください。

次に、そのゲームをどこが開発したか…という意味において、この記事で言及する○○部や○○グループという単位はあくまでざっくりとした目安に過ぎない点に注意する必要があると思います。

任天堂の内製ソフトでは、基本的に最初は少人数のチームで企画・実験を行っています。そして、それが上手く行ったら(開発中盤あたり)、一気に人を増やしてゲームを完成させていきます。

その際に、同じ開発グループからスタッフを入れることもあれば、ちょうど手が空いたチーム(作っていたゲームが完成した等)から人を借りたり、適材適所で人を借りたりすることもあることが、インタビュー記事から分かります。

例えば、『ピクミン3』のインタビューにおいて、宮本茂さんがこのようなことを述べています。

―― 元々「ピクミン3」は、Wii向けに開発されていたようですが、開発期間としてはどれくらいになるのでしょうか? また、開発人数はどのくらいなのでしょうか?

宮本氏: とても不思議に思われるかもしれませんが、普通の開発会社では有りえないような体制で開発しています。入社以来「ピクミン」のプログラムだけしかしていないという人がいるくらいです。まず、開発初期は少人数で色々なことを試すんです。Wiiでは操作を中心に、DSでは新しいタイプの「ピクミン」を作ろうと色々テストをしてきました。そして、Wii Uに辿り着いた時に“いける!”と確信しました。Wii Uは「ピクミン」を待っていたハードというくらい相性がいいんです。そこから人数を増やして、Wii U版を作り始めました。

 3段階くらいあって、最初の段階は5人で5年くらいやってます。Wii版の仕上げの時で十数人になり、人数が減ってDS版の開発が始まりました。続いてWii Uでやるぞ! となったら10~20人くらいになり、開発終了まで残り8~10カ月の頃には50人くらいになりました。Wii Uでやるぞ!となったのは去年のE3に出した辺りですね。

―― 人数の変動が結構あるんですね。

宮本氏: 足りなくなったらどこかから応援してもらいます。うちはメインのメンバーは固定ですが、例えばアートだと、「マリオ」シリーズのメンバーが「ゼルダ」シリーズの開発に入ったり、「ゼルダ」のメンバーがWii Fitに入ったりします。仕事量に応じて変更するんです。自転車操業ですね(笑)。

【インタビュー】宮本茂氏 発売記念インタビュー、自信の仕上がり!! Wii U「ピクミン3」 – GAME Watch より

他にも、例えば『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』は企画開発部が開発を主導したゲームですが、ムービーシーンのサウンド制作においてはオーケストラ音楽のノウハウを持っていた東京制作部からスタッフを借りていたりなど…任天堂内製ゲームにおいてはこうした作り方が定着しているのだと考えられます。

つまり、最初の企画・実験段階から参加しているスタッフだけをみれば「○○グループ」という範囲に収まるかもしれませんが、最終的には単に「◯◯グループ!」と一括りにできないような、多種多様な経験を持つスタッフが開発に参加することになるのです。

さらに、そもそも企画の段階から、1つのグループだけでなく複数のグループから多様なスタッフを集めてグループ混合のチームを組んでいる場合もあると思います。

そのため、任天堂の開発体制を考える上で、以下で詳しく見ていく組織体制はあくまでも参考程度に捉えていただけたら幸いです。

最後に、企業の組織体制は流動的で、組織再編や異動などで常に変化します。そのため、ここに書かれている内容が、必ずしも最新の情報を反映できている訳ではないことをご了承ください。

組織体制を詳しくみてみる

組織体制については文章だけでは複雑で分かりにくい部分も多いため、この画像を参考にしていただければと存じます。

企画制作本部

前述したように、企画制作本部は2015年9月14日に情報開発本部と企画開発本部が統合されて生まれた部署です。

このうち、情報開発本部はスーパーマリオシリーズやゼルダシリーズ、どうぶつの森シリーズなどの人気作をはじめとして、任天堂の様々なゲームの開発に関わってきた部署でした。

また、企画開発本部はニンテンドーDSの発売を控えた2004年に誕生した部署でした。内製ゲームや協力会社と開発するゲームを担当する「企画制作部」や、開発環境の整備を行う「環境開発部」などを束ねており、元々当時社長であった岩田聡氏直轄の部署でした。その後、2013年4月25日以降は高橋伸也氏がその役割を引き継いでいました。

その立ち上げのきっかけについて、岩田聡氏は下記のように述べています。

岩田:2004年当時に企画開発本部を立ち上げたときの私の考えは、「宮本の担当からセカンドパーティーさんと一緒に開発するチームを外して、内作に集中してもらおう」というもので、それからずっと私がその本部を見ていたのですが、(任せられる人材が育ったことで)私の担当から外すことができましたので、その意味では、しっかりと跡を継いでくれる人が見つかって一歩前進したと思います。

2015年2月17日(火)第3四半期決算説明会 質疑応答 – 任天堂公式ホームページ より

また、環境開発部については、下記のインタビューにおいて、立ち上げから参加しているスタッフが設立当時の話やその役割に触れています。

企画制作部

・第2プロダクショングループ

任天堂公式ホームページの「開発者に訊きました」の情報から、第2プロダクションは他社との共同開発作品であるファイアーエムブレムゼノブレイド星のカービィシリーズなどを担当しているグループだと考えられます。

統合前において、上記シリーズのプロデューサーを担当していた山上氏は、企画開発本部 企画開発部 第2プロダクショングループに所属していたことが分かっています。

そのため、旧企画開発本部 企画開発部 第2プロダクショングループの役割が、この企画制作部第2プロダクショングループに引き継がれているのではないかと考えます。

・第3プロダクショングループ

任天堂公式ホームページの「開発者に訊きました」の情報から、ゼルダの伝説シリーズの開発を担当している藤林氏が所属していることが分かります。

そのため、元々ゼルダ作品を担当していた、旧情報開発本部制作部第3グループの役割が引き継がれていると考えられます。

・第4プロダクショングループ

第4プロダクショングループは、企画開発本部と情報開発本部の統合がよく感じられる、分かりやすい例です。

任天堂公式ホームページの「開発者に訊きました」の情報から、第4プロダクショングループには、『ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング』の開発を担当した益田氏、手嶋氏、『やわらかあたま塾 いっしょにあたまのストレッチ』の開発を担当した久保氏、そして「Nintendo Switch Sports」の開発を担当した嶋村氏、山下氏、森井氏、岡根氏、横山氏が所属していることが分かります。

このうち、開発者インタビュー(社長が訊く)の情報から、2015年の統合前は、嶋村氏山下氏森井氏氏はいずれも情報開発本部に所属していたことが分かります。

また、スタッフクレジットの情報から、岡根氏は『2Dゼルダ』や『Wii Music』などの情報開発本部制作のゲーム、手嶋氏は『リズム天国』等の企画開発本部制作のゲーム、益田氏は『2Dマリオ』・『ピクミン』・『やわらかあたま塾』などの情報開発本部のゲーム、久保氏は脳トレやトモコレといった企画開発本部が制作していたゲームに関わっていたと考えられます。

このように、第4プロダクショングループは統合前のグループがそのまま引き継がれているわけではなく、企画開発本部情報開発本部の様々なグループのスタッフが混在して立ち上がったグループになっています。

ここからは憶測ですが、所属する開発スタッフのこれまでの経歴や実際に開発しているゲームをみる限り、Touch! Generations系統のソフトを担当した経験のあるスタッフの一部が、この第4プロダクショングループに集まっているのではないかと考えます。

2015年の統合前までは、脳トレなどは企画開発本部、Wii Fit・Wii Sports・やわらかあたま塾などは情報開発本部というように、同じTouch! Generations系統のソフトでも開発部署が異なっていました。

ですが、Touch! Generations系統のソフトは、「ゲームに興味が無かった人や、触れたことが無かった人も楽しめる」という目指している方向性は同じです。そのため、同じグループにまとめることで、ノウハウの共通化を図ることができ、開発者間の意思疎通や人員の貸し借りもしやすいというメリットが生じるのではないかと考えます。

・第5プロダクショングループ

任天堂公式ホームページの「開発者に訊きました」の情報から、スプラトゥーンシリーズの開発を担当した井上氏、佐藤氏が所属していることが分かります。

統合前、Splatoonやどうぶつの森、Wii Musicなどの開発は、企画開発本部制作部第2グループが主導していました。

そのため、この旧第2グループの役割やスタッフの一部が、第5プロダクショングループに引き継がれているのではないかと考えます。

ただ、第5プロダクショングループについては、他にも、Wii Uのローンチに関わったスタッフが多く在籍しているチームという見方もできると考えます。

実際、スプラトゥーンの開発を主導していたスタッフ(リード職など)は、どうぶつの森やWii Music等の開発経験はあっても、ずっとどうぶつの森に関わってきた!というような人は少なく、全体としての経験は多様です。

そして、例えばスタッフロールや特許公報などの情報をみてみると、アートの井上氏はWii Uメニューの開発(デザイン)を担当。音楽の峰岸氏はWii UメニューのBGMを担当していますし、佐藤氏と阪口氏はそれぞれ、Wii Uローンチのタイトルである「NewマリオU・ニンテンドーランド」の開発に参加されていました。

(ちなみに、阪口氏はNintendo Landでジャイロでのカメラ操作に関する特許を取得しています。Splatoonのジャイロ操作の調整に対するこだわりも納得できるなぁ…と感じました。)

また、初代スプラトゥーン発売当時のインタビューでは、開発スタッフが以下のようなことを述べています。

天野 広場にみんなが集まって吹き出しで表示されたり、ステージの看板などに貼られたりといったことは、企画の当初からやりたいと思っていたんですが、Miiverseをいい形で使いたいと思った結果なんです。
野上 もともと『スプラトゥーン』の開発スタッフは、Wii Uのローンチに関わったスタッフが多くて、僕はWii Uの本体機能などを担当していた縁で、Miiverseにも関わっていて。
阪口 僕も『Nintendo Land(ニンテンドーランド』で、同じようにMiiverseが表示される広場を担当していたんです。
野上 そういうスタッフが多かったので、今回は集大成を目指して、Miiverseを入れていました。

『スプラトゥーン』開発秘話。すべては長く楽しんでもらうために。多くの裏設定話も飛び出した、開発スタッフインタビュー【システム編】 – ファミ通.com

こうした点から、あくまでも憶測ですが、第5プロダクショングループがスプラトゥーンシリーズの開発の中心なのであれば、おのずと「Wii Uのローンチに関わったスタッフが多いチーム」と考えることもできると思います。

(因みに、Wii Uは、どうぶつの森のプロデューサーである江口氏が開発を主導していました。その関係で、Wii Uはローンチソフトや本体OSなど、開発に旧制作部第2グループのスタッフが多く参加している…という可能性もありますが、あくまで憶測の域を出ません。)

・第10プロダクショングループ

任天堂公式ホームページの「開発者に訊きました」の情報から、過去作の「やわらかあたま塾」シリーズの開発に関わった吉信氏、藤井氏がこのグループに所属していることが分かります。

また、「ピクミン4」に関わった神門氏、平向氏、的場氏もこのグループに所属しています。

なお、スタッフクレジットの情報を見ると、やわらかあたま塾チームとピクミンチーム、2Dマリオチームは基盤スタッフ(※プロデューサー・ディレクター・リード職と言った、開発初期段階から参加しているスタッフ)が少し共通しています。

そのため、ここからは憶測ですが、2Dマリオの最新作である「スーパーマリオブラザーズ ワンダー」についても、このグループが開発を主導している可能性があると考えます。

協同開発プロダクショングループ

任天堂公式ホームページの「開発者に訊きました」の情報から、阿部氏がこのグループに所属していることが分かります。

スタッフクレジットの情報から、阿部氏はピクミン2の開発を終えた後、マリオvs.ドンキーコングシリーズなどのNintendo Software Technology社が制作するゲームの開発に参加。そして近年は、「いっしょにチョキッと スニッパーズ」や「ストレッチャーズ」、「Good Job!」といった海外デベロッパーの作品にサポートやアシスタントプロデューサー、クリエイティブディレクターとして参加されています。

こうしたことから、憶測にはなりますが、協同開発プロダクショングループは「世界の中から、興味深い開発中の作品や開発スタジオを見つけ出し、コンタクトを取って、その開発や販売を一緒になって支援する」という役割のグループなのではないかと考えます。

実際に、「いっしょにチョキッと スニッパーズ」については、その開発と任天堂の関わりについて、以下のようなことが語られています。

小泉氏:
 ええ。例えばローンチタイトルの「いっしょにチョキッと スニッパーズ」(以下,スニッパーズ)は,Nintendo Switchの情報開示をしていない時期に,SFB Gamesというインディーズデベロッパが独自で開発していたものなんです。
 それを見たときに,コントローラを二つ使って遊ぶというコンセプトがNintendo Switchにピッタリだということでコンタクトをとりました。そこから,Joy-Conへの対応もライブラリを作って共有しつつ,彼らと一緒になって短期間で作り上げました。

任天堂は今,何を“Switch”しようとしているのか。取締役常務執行役員の高橋伸也氏と,Nintendo Switch総合プロデューサーの小泉歓晃氏に聞く – 4gamer.net

また、憶測にはなりますが、阿部氏は、Wii Uで2015年に行われた「世界のインディーゲームを任天堂がローカライズして販売する」プロジェクトにおいて、『リトルインフェルノ』と『ザ・スワッパー』のローカライズを担当しています。

そのため、協同開発プロダクショングループの活動は、このWii U時代の取り組みと地続きなのではないかと考えます。

もしそうだとすれば、Wii U時代に撒かれた種が、形を変えてNintendo Switchで花開いているのが素敵だなあと感じます。

サウンド統括グループ

任天堂公式ホームページの「開発者に訊きました」の情報から、若井氏木田氏がこのグループに所属していることが分かります。

2015年の統合前、任天堂の情報開発本部には、サウンドスタッフのみが所属するサウンド統括グループがありました。

(サウンド制作グループではなく、サウンド統括グループや単にサウンドグループと呼ばれたりなど、記事によって呼び方が変わっていますが、所属しているスタッフが同一なので、恐らく同じグループのことを指しているのだと考えます。)

それによって、必要なチームに柔軟にサウンドスタッフを配置可能になっていたと考えられます。

こうした統合前のサウンド統括グループの役割を、このグループは引き継いでいると考えます。

ただし、例えば、Nintendo Switch Sportsのサウンドを担当した横山氏は第4プロダクションに、Splatoon3のサウンドを担当した峰岸氏は第7プロダクションに所属しているなど、サウンド統括グループとは別の、通常の開発グループに所属しているサウンドスタッフが存在する点が個人的には気になりました。

特に峰岸さんについては、同じスプラトゥーン開発チームの一員であるにも関わらず、前述した第5プロダクショングループとも違う別のグループの所属となっています。

これらの疑問については、今後発売されるゲームのスタッフクレジット等が、答えを知る頼りになるのではないかと思います。

スマートデバイスプロダクショングループ

その名の通り、スマートデバイス向けのゲーム(MiitomoやFEヒーローズなど)の開発を手掛けているグループです。

ただ、個人的に気になるのが、任天堂にはこのグループとは別に、2015年に新設されたビジネス開発本部のスマートデバイス事業部があるという点です。

どちらもスマートデバイス向けの開発を行う部署なので、両部署にはどのような違いがあり、どう役割分担がされているのかという点が気になりました。

スマートデバイスプロダクショングループに所属するスタッフの具体的な役割として、例えば『Miitomo』に関する上記インタビュー記事では、アプリの仕様をまとめたり、協力会社との共同の部分を行ったということが述べられています。

また、上記インタビュー記事からは、『FEヒーローズ』の任天堂側のディレクター職を、スマートデバイスプロダクショングループ所属のスタッフが担当していることが分かります。

このようなことから、スマートデバイスプロダクショングループに所属するスタッフの役割の1つとしては、企画のディレクションやコーディネートが挙げられるといえます。

対して、スマートデバイス事業部については後で詳しく見ていきますが、運営の部分を担っているという印象がありました。

ただし、例えばFEヒーローズのサブディレクターはスマートデバイス事業部に在籍しているため、必ずしもディレクター職やコーディネート職の仕事をしているスタッフが全員スマートデバイスプロダクショングループに在籍しているとはいえません。また、運営についてもスマートデバイス事業部だけで行われているわけではなく、例えばソフトのデバッグなどを主に担当しているマリオクラブもスマートデバイス向けアプリの運営に関わっています。

憶測ですが、個人的には、スマートデバイスプロダクショングループはコンシューマー向けゲームの開発経験が豊富な人が多く、反対に前職でスマートフォン向けの開発をしてきた(キャリア採用?)という人がスマートデバイス事業部には多い気がして、どちらかというと、キャリアの違いが役割分担として両部署の間にはあるのかもしれないと思いました。

ただ、そういう方がたまたまインタビューを受けているだけかもしれないので、はっきりとしたことは分かりません。

・所属不明

以下では、組織再編前にあったグループのうち、現在はどのグループに役割が引き継がれているのか調べても分からなかったものについて簡単に触れていきます。

再編前のグループがそのまま引き継がれているとは限らず、組織再編後にグループ同士の統合や消滅などがあった可能性もあるため、参考程度に見ていただければ幸いです。

元々の情報開発本部東京制作部

主に3Dマリオシリーズを担当していたグループです。

現在も3Dマリオは東京のスタッフが中心となって開発されていることから、このグループも現在の正式名称は不明であるもののそのまま存続しており、近年の担当作品として、スーパーマリオ オデッセイ、進め!キノピオ隊長、スーパーマリオ 3Dコレクション、スーパーマリオ 3Dワールド+フューリーワールドの開発を主導していると考えられます。

元々のマリオカート開発チーム

近年の担当作品としては、マリオカート8 デラックス(2017)、ARMS(2017)の開発を主導していたと考えられます。

元々のキャメロット系ゲーム担当チーム

近年の担当作品としては、マリオテニス エース(2018)、マリオゴルフ スーパーラッシュ(2021)の開発を主導していたと考えられます。

元々の企画開発部企画開発部第1プロダクショングループ

2Dメトロイドやトモコレなど、坂本賀勇氏がプロデューサーを担当したゲームの開発を主導したグループです。

もし、このグループがそのまま存続しているとすれば、近年の担当作品として、メトロイド サムスリターンズ(2017)、メトロイドドレッド(2021)、ファミ探リメイク(2021)の開発を他社と共同で担当していると考えられます。

ただ、個人的には、元々このグループが開発を担当していたメイドインワリオについて、プロデューサーが新作の「おすそわける」では坂本氏から田邊賢輔氏に変わっているのが気になります。

説1
メイドインワリオの担当が坂本氏のチームから田邊氏のチームに変わった。実際に、田邊氏がプロデューサーを務めてきたゲームに参加していたスタッフが、「おすそわける」から新たに参加している。ただ、元々メイドインワリオを担当してきた任天堂スタッフもクレジットに名前があるのが気になる点。

説2
坂本氏のチームの一部と田邊氏のチームの一部が統合した新しいグループができている。
どちらもメトロイド関連とマリオファミリーゲームを担当していることは共通しており、 インテリジェントシステムズ担当の作品(メイドインワリオ、ペーパーマリオ)に関わっている点も共通している。それなら、一部統合した方が作業を進めやすいとも考えられる。

元々の企画開発本部企画開発部第3プロダクション

田邊賢輔氏を中心として、レトロスタジオ制作のゲームや、ペーパーマリオ、ルイージマンション等の作品を担当していたグループです。

もし、このグループがそのまま存続しているとすれば、近年の担当作品として、ルイージマンション3(2019)、ペーパーマリオ オリガミキング(2020)、おすそわける メイドインワリオ(2021)、マリオストライカーズ バトルリーグ(2022)の開発を他社と共同で担当していると考えられます。

元々の企画開発部第4プロダクショングループ

Wii Partyシリーズやマリオパーティシリーズなど、NDキューブ関連のゲームを担当していたグループです。

もし、このグループがそのまま存続しているとすれば、近年の担当作品として、アソビ大全(2020)やマリオパーティ スーパーラッシュ(2021)の開発を他社と共同で担当していると考えられます。

デザイン関連のグループ

元々の企画開発本部には、アートワークデザインのグループ、キャラクター制作グループUIデザイン制作グループといった、デザインに関する専門のグループがありました。

また、ゲームソフトの開発だけではなく、amiiboのデザインも企画開発本部のキャラクターデザイングループが担当していました。

これらのグループが現在はどう引き継がれているかは不明です。

ちなみに、余談ではありますが、下記のインタビューで企画制作部の本部長である高橋伸也氏が、以下のようなことを述べています。

 ──IPをさまざまな領域に広げていくと、IPが持っていた世界観が崩れないように、展開先の商品などをコントロールする必要がこれまで以上に生じます。御社の場合はどなたがその役割を果たすのですか。

 高橋氏 大きな意味では私です。今から十数年前、家庭用ゲーム機「ニンテンドウ64」「ニンテンドー ゲームキューブ」を出していたころ、マリオをほかのゲームソフトメーカーや協力会社に扱ってもらうことが多くなってきた時期がありました。その時、私がそれぞれの開発会社にちゃんとしたマリオを作ってもらうためのキャラクター管理チームを立ち上げました。

日経Xトレンドより

キャラクター制作グループの役割の1つとしては、ライセンスグッズの監修もあります。そのため、高橋氏が立ち上げたキャラクター管理チームを引き継いだのが、企画開発本部のキャラクター制作グループであった可能性があると考えます。

技術開発本部

技術開発本部は、2015年9月に統合開発本部システム開発本部が統合して誕生した部署です。

このうち、統合開発本部はハードウェアの開発を行っていた部署で、据え置き型ゲーム機の開発を行っていた総合開発本部と携帯型ゲーム機の開発を行っていた開発技術本部が2013年に統合して生まれました。

2013年1月31日の経営方針説明会では、当時の岩田聡社長が統合開発本部の設立について言及しています。

また、システム開発本部はSDKなどのゲームソフトの開発環境の整備を行う環境開発部や、サーバーシステムやMiiverseなどのネットワークサービスの開発・運用を行うネットワーク開発運用部などを統括していた部署です。

因みに、ここからは憶測になりますが、環境開発部は元々企画開発本部にあった環境制作部の一部(開発環境制作第1グループ)が2013年~2014年ごろにシステム開発本部に移動して出来た部署である可能性があると考えます。

なぜなら、環境制作部と環境開発部は開発環境の整備が役割の1つであるという点で共通しており、2014年以降環境開発部という名称がインタビュー記事などに登場するようになったのと入れ替わりに環境制作部が記事に出てこなくなっているからです。また、実際元々環境制作部にあったキャラクター制作グループが2015年には企画開発部に移動していることからも、環境制作部が無くなって企画開発本部企画開発部とシステム開発本部にそれぞれ役割が移動した可能性はあるのではないかと考えます。

技術開発部

・プラットフォーム技術開発グループ

「マイニンテンドーストア」のリニューアルに関する下記記事では、プラットフォーム技術開発グループのスタッフ2名がインタビューを受けています。

また、下記記事では、任天堂プラットフォーム向け汎用ゲームサーバー(NPLN)に関して、このグループに所属するスタッフが語っています。

このうち、河原氏は、組織再編前はシステム開発本部のネットワーク開発運用部に所属していました。

2015年の任天堂採用情報ホームページに掲載されたインタビューでは、ネットワーク開発運用部の仕事内容は以下のようなものであったと述べられています。

ネットワーク開発運用部は、ゲーム用のネットワーク系機能の基盤システムの開発と、ゲームソフトのダウンロード販売などのインターネットを使ったお客様向けサービスのシステムの開発、およびそれらの運用業務に携わっている部署です。

https://www.nintendo.co.jp/jobs/interview/2015/nagao.html

これをみると、「ネットワーク系機能の基盤システムの開発」という仕事内容は、前述したNPLNの開発と通じるものがあります。そのため、少なくとも旧ネットワークシステム開発運用部の役割を、プラットフォーム技術開発グループは一部受け継いでいるのではないかと考えられます。

ただ、後述するように、現在の任天堂ゲームのネットワークに関わる部署としてはネットワークシステム部も別にあるため、両者の違いが気になります。

ただ、マイニンテンドーストアも、オンラインシステムも、直接ゲーム機の開発に関わる仕事というよりは、プラットフォームを支える部分という点では共通しています。そのため、憶測ですが、プラットフォーム技術開発グループは、ゲーム機の内蔵アプリケーションや機構設計というよりは、こうしたよりインフラ的な部分に近い箇所を担当している可能性があると考えます。

・技術開発コーディネートグループ

下記記事では、このグループに所属している斉藤氏によって、その仕事内容が詳しく語られています。

これをみると、外部のメーカーとの調整やプロジェクトマネジメントの仕事を中心として行うグループなのかなと感じました。

・名称不明

インタビューから、統合前の技術開発本部には、機構設計グループや電子回路設計グループ、デザイングループなどがあったことが分かります。

正式な名称は不明ですが、こうしたグループは統合後の技術開発部にも引き継がれているのではないかと考えます。

ネットワークシステム部

システム開発本部の役割が一部引き継がれてできた部署だと考えられますが、前述したとおり、ネットワーク系の仕事という意味ではプラットフォーム技術開発グループと被る部分があります。

憶測ではありますが、インタビュー記事で分かる仕事内容を踏まえると、Switchのプッシュ通知システムの開発など、よりゲーム機本体の機能に近い部分の開発を担当している可能性があると考えます。

https://d1.awsstatic.com/events/jp/2018/summit/tokyo/customer/06.pdf

また、任天堂公式ホームページの採用情報では、ネットワーク開発サービスの仕事が「フロントエンド開発」「バックエンド開発」「サーバーインフラ開発(SRE)/分析基盤開発」「スマートデバイスアプリケーション開発」「システムソフトウェア開発」「ゲームネットワーク開発」「セキュリティ対策」の7つに分けて紹介されています。

この分類を当てはめると、ネットワークシステム部は少なくとも「システムソフトウェア開発」の部分を担っており、対して「ゲームネットワーク開発」の方はプラットフォーム技術開発グループが担当しているといった役割分担がざっくりとなされているのではないかと感じます。

なお、インタビュー記事などから、ネットワークシステム部が所管するグループとして、ネットワークインフラ開発グループオペレーション・サポートグループが存在することが分かります。

ビジネス開発本部

スマートデバイス事業部

・事業システム開発グループ

スーパーマリオランの開発についての下記インタビュー記事では、このグループに所属する府川氏と竹本氏が、AWS を使用したゲームサーバーのインフラ構築について語っています。

なお、竹本氏については、統合前は、 旧ネットワーク開発運用部に所属していました。

加えて、下記の講演では、府川氏がニンテンドーアカウントのサービスの開発にも関わっていたことが分かります。

https://pages.awscloud.com/rs/112-TZM-766/images/CUS-20_AWS-Summit-2023_Nintendo-Systems_FINAL.pdf

このことから、事業システム開発グループはスマートデバイス向けアプリの開発をシステムの部分から支えていることは勿論、任天堂のサービス全般の設計に関わっており、旧システム開発本部をより発展させたような印象を受けました。また、その背後には2015年のDeNAとの提携があると考えられます。

なお、府川氏は2023年現在で、ニンテンドーシステムズに所属しています。このことから、ニンテンドーシステムズにはこのグループの役割が一部引き継がれているのではないかと考えます。

・スマートデバイス運営グループ

下記インタビューから、その名の通り、スマートデバイス向けアプリの運営やカスタマーサポートを担当しているグループだと考えられます。

・スマートデバイスプロモーショングループ

下記インタビューから、その名の通り、スマートデバイス向けアプリの面白さを多くの方に伝える「プロモーション」を担当しているグループだと考えられます。

・名称不明

正式な名称は不明ですが、スマートデバイス事業部には少なくともここまで見てきたグループの他に、ローカライズを担当するグループと、開発を担当するグループがあることが分かります。

終わりに

ここまで色々と見てた通り、現在の任天堂の開発体制については良く分からない部分が多いものの、2015年の組織再編はとても大きなものであり、ゲームソフトやハードウェアの開発に大きな影響を与えていることが予想できます。

実際に、『あつ森』や『フューリーワールド』『スプラ3』では、これまで企画開発本部制作のゲームに関わってきたコンポーザーの方が新たに開発に参加していて、それが作品の音楽に新しい風を吹かせている気がして凄く良いなぁと個人的に感じます。

また、直近でもニンテンドーピクチャーズやニンテンドーシステムズといった、新たな任天堂関連会社が誕生しています。これらの会社は、実際に2023年に発売されたゲームのスタッフクレジットにも載り始めており、今後発売されるゲームにも少なからずその影響が垣間見えるはずです。

そうしたゲームの新しい変化をより楽しむことに、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

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