帽子を投げて、マリオが敵に乗り移るキャプチャーは、スーパーマリオオデッセイの目玉の一つです。この新しいアクションをプレイヤーに違和感なく受け入れられるために、マリオオデッセイでは、どのタイミングでどの敵をキャプチャーするかが綿密に調整されています。
例えば、最初に訪れる帽子の国で、マリオはカエルと電線にキャプチャーします。なぜ初めてのキャプチャーがカエルと電線なのかは後述しますが、特に電線は今作の欠かせない移動手段になってくるため、早めに慣れてもらうために最序盤で登場しています。
そして、次に訪れる滝の国で最初にキャプチャーするのはワンワンです。
この国は、スーパーマリオブラザーズでいう1-1的なステージなっています。普通ならクリボーなどのおなじみのザコ敵が出てきそうですが、このステージで登場するのはなぜかワンワン。
実はこの、滝の国で最初に出会い、キャプチャーするのがワンワンであるということが、とっても面白いレベルデザインなんです。
まず、ワンワンはまだ帽子投げに慣れていない人でもとってもキャプチャーしやすいように出来ているのです。鎖でつながれていて大きく動き回ることはありませんし、こちらに気づいてから攻撃するまでは止まっていてくれます。しかも攻撃してくるときは、一直線にきれいにこちらへ向かってきてくれます。襲ってくる範囲は鎖が届くところまでなので、慎重にキャプチャーをするタイミングを窺えますし、体も大きいので帽子を被せやすくなっています。
しかしそれだけでは簡単すぎて面白くないですよね。そこで、ワンワンの特徴が生きてきます。
ワンワンは、キャプチャーするため近づくと、素早く攻撃してきます。つまり、キャプチャーすることがリスクになるんです。なので、「この距離なら気づかれずにキャプチャーできるかな?ワッ気づかれた!よし、帽子を投げてキャプチャーだ・・・あれ、届かない・・・ギャーッ!!!!!」・・・というようにキャプチャーするまでの駆け引きがとっても楽しいんです!キャプチャーするのは簡単だけど、駆け引きがあって一筋縄ではいかない、という絶妙な難易度が、ワンワンによって実現されています。
次にワンワンの操作です。このゲームは、マリオが敵に乗り移ることで、キャラクターの操作が全く変わります。それはつまり、覚える操作が多くなるということでもあります。
そこでオデッセイでは、マリオの通常操作に似たキャプチャーから順に登場させているんです。
例えば、帽子の国でキャプチャーできるカエルは、歩く・ジャンプというマリオの操作そのままで動かせますし、電線も行きたい方向にアナログスティックを動かすというマリオの操作感のままで直感的に操作できます。
そして、滝の国のワンワン。これも、アナログスティックを動かして操作するという意味ではマリオと似ています。
ですが、このワンワンはここまでのキャプチャーとは少し違います。ワンワンには「はじく」というこれまでに出てきていない操作が加わっているのです。
そして、この「はじく」という動作こそ、さまざまな場面で使われる今作の重要なアクションのひとつなんです。
例えば、都市の国にあるポールや、料理の国のボルボーノ人もこのアクションを使ったものですし、クッパの国で出会うツックンもそうですね。
つまり、ワンワンには、この先のキャプチャーで必要になってくるアクションを教えるチュートリアル的な意味合いもあるのではないでしょうか。
ワンワンは鎖でつながれているので、自分がどの方向にはじこうとしているのか分かりやすいですし、はじいた先が穴でも落下ミスということがないので、このアクションを習得するのにぴったりの存在です。
最後に、ワンワンは箱庭3Dマリオの原点、スーパーマリオ64でも、一面のボム兵の戦場で登場します。久しぶりの箱庭マリオである今作は、マリオ64をリスペクトしているなーという場面が随所に見られますが、このワンワンもその一つなのです。
・・・そんなレベルデザインを無視できちゃうのも、このゲームのいいところなんですけどね。
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